趣味の在り方
時代とともにアクアリウムと言う趣味は変化が求められています。
今後のアクアリウムの在り方のヒントになれば幸いです。
時代の流れとアクアリウム
黒い思惑があるものの、生物多様性、自然保護を国際的に目指すのが世の流れでしょう。この流れが善しと謳われる時代におきまして、外来生物を飼育する趣味である「アクアリウム」は、とても危ういものがあります。自国に多くの外来魚を繁殖が可能な状態で招いているのですから、この趣味は明らかに自国の生態系に悪影響を及ぼす可能性があるからです。
放流をすれば、次のブラックバス問題を引き起こすことができます。ですから環境省は、幾つかの種を特定外来生物へ指定したのです。厳しい言い方をしますと、愛玩目的だけのアクアリウムは、そういった視点ですと「有害な趣味」と言われても仕方がないのではないでしょうか。
そうであれば、自国の自然環境に悪影響を及ぼしかねない趣味である、アクアリウムの存在意義が問われてくるでしょう。これは国内種も同様です。
日本人のペット観の変化
研究者の濱野 佐代子氏はペットが子供の地位にとって代わる可能性があるかもしれないと指摘されています。犬の飼い主や子供のいない20代の女性を対象にペットはどんな存在かアンケートをしたところ「子供のような存在」という回答が上位であったことが判明しているのです。その理由として、世話をしないと死んでしまうという事が考えられ、また言語を話さず人よりもコミュニケーションが洗練されておらず複雑でない事が要因と見られるとしています。
そして、日本人が子供に何を期待しているのかについても触れられています。2005年の内閣府調査によると、50歳未満の子供のいる人の回答では「生きがい・喜び・希望」と回答が得られており、女性にいたっては同時に「無償の愛を奉げる対象」の回答割合も高かったようです。
少子化問題も影響しているかもしれません。子供の代用としてのペットという選択肢が高まる要因となるのではないでしょうか。更に、ほかの工業国と比べた日本の特徴として「老後の精神的支え」が高く期待されることから、精神的満足度を満たしてくれる可能性がペットにあります。そして、その感覚がペットという認識に対し、動物愛護への高まりに通じる可能性があります。
平成25年、「動物の保護及び管理に関する法律」に「終生飼養の努力」が明記されました。つまり、一度飼育するからには、終生飼養の努力をしないといけないということです。アクアリウムの世界では飼育魚を放出することが昔から行われていますが、飼育者の責任に反する行動と見られてしまう可能性があります。これは動物愛護への高まりという時代の流れとして当然の結果なのでしょう。
動物愛護がアクアリウムに影響するでしょうか。平成22年、環境省は「中央環境審議会動物愛護部会 動物愛護管理のあり方検討小委員会(第6回)」において、魚を愛玩動物に含めるかどうかのヒアリング調査を行っています。これは、「魚を愛玩動物に入れた方がいいのではないか?」という声の高まりで開かれたそうです。
魚を愛玩動物に入れてしまうと、通販が規制されますし、金魚すくいも危うくなってしまうかもしれません。
海外ではヴィクトリア・ブレイスウェイト (著)「魚は痛みを感じるのか」といった本の影響で魚に関する見方が変わりつつあると聞きました。さて、日本では今後どうなるのでしょう。
アクアリウムの存在意義
アクアリウムは人だけではなく、生物多様性、自然保護といった観点にもプラスな面が見られます。魚や水草を育成することで、動物や自然への関心が高まり、生物多様性や自然保護といった行動へ繋がることも可能ではないでしょうか。飼育をして得られる感覚は、水族館や採集といった体験と、また別のものであり、「有益な趣味」といえるでしょう。
「有害な趣味」と「有益な趣味」は表裏一体です。どちらに転ぶかは業界や愛好家の行動次第です。
どうあればいいのか?
時代はアクアリウム、または外来生物を飼育する趣味に責任を求めています。アクアリウムを「有益な趣味」とする必要があるでしょう。まずは、飼育生体を逃がしてはいけないということを徹底しなければいけません。どうしても飼育できないという方がいれば、「里親募集サイト」や「日本観賞魚振興事業協同組合の引き取りシステム」を教えてあげましょう。
また、アクアリウムには決まりがあり、それら決まりを知ることは自身の身を守るだけでなく、自然保護を考えるうえで大変重要です。知らない方には、このサイトにまとめられている情報を教えてあげてください。
下の図、環境省の外来種認知度調査では年々、外来生物法を知る人が減少していることが分かります。
平成25年度から「知っている」が10%を切っています。外来生物法はここまで知られていないのです。まずは、アクアリストから認知度を上げていく必要があるでしょう。
認知度を上げて、こういった規制の情報が広まることで、いきすぎた規制を回避できるかもしれません。
環境省では、パブリッコメントの募集を常に行っており、意見を送ってみるのもいいでしょう。
これ以上、次の世代の愛好家を悲しませることのない、趣味の世界であることを祈ります。
